「倫理研究フォーラムin埼玉」を開催しました
主催:一般社団法人倫理研究所
平成30年7月22日(日)、川口総合文化センター リリアで開催しました。テーマは『日本文化再発見─先人の知恵に学ぶ』。参加者1,062名。
はじめに、丸山敏秋理事長が次のように開催趣旨を述べました。「日本だけでなく、世界中で大変動が続いています。国内ではあらゆる領域で改革や反転が起きています。こうした時代を逞しく生き抜くには、日本のことをもっと知り、先人の知恵に学ぶことが必要です。それを未来につなげていくこと。今回はこういうことを皆さんと一緒に確認したい」。
第1 部では、引きつづき丸山理事長が「縄文から平成へ━日本文化の核にあるもの」というテーマで発表。縄文文化の説明にはいる前に、以下の要点をあげました。
①日本の最大の特色は風土(風=気候・土=大地、生活環境)である。
②神話時代から日本は、「豊葦原の瑞穂の国(湿地帯が多く稲が豊かに実り、米の文化が古くから拡がり栄える国の意。日本国の美称)」と呼ばれる。
③日本人の資質として、卓越した「受容吸収消化力(何事も受け止めて活かしていく力)」がある。
大きな転換期に差しかかって、見えない未来に不安が高まっている今こそ、「ルーツ」に立ち戻るのが常道です、と提唱しました。つづいて、日本文明のルーツである、約23 万年前に誕生した縄文文明について画像を使いながら説明。以下の縄文文化の特色を述べました。
①縄文人は、生命の根源に対する畏敬の心を持っている。
②人智を超えた大きな力に対して、「有難い」という感謝の念を持っていた。
③ 純粋・無私の祈りの精神がある。
④独特な美意識の深化と巧みな手技を持つ。これは素晴らしい物作りの文化として、現代に受け継がれている。
「縄文文化から様々な学びを深め、世界にも発信していきたい」と結びました。
次に、倫理文化研究センター松本亜紀専門研究員が、「子産み・子育て文化再考ー受け継がれてきた日本人の知恵と『こころ』」というテーマで、研究発表を行ないました。
子育てをめぐる現状と課題を説明し、6 割の若い女性が「出産は痛い、苦しい、大変」という認識を持っているとのこと。なぜこのようなネガティブなイメージが広まってきたのか、データを基にその要因を分析(インターネットの情報・口コミなど)した後、一昔前(病院出産以前)に見られた、出産の風景について詳説しました。松本専門研究員が師事する三砂ちづる教授(津田塾大学)は、「豊かな出産」について、「身体に向き合い、女性の人生の変革につながるような出産体験 のこと」と定義しています。胎児や周囲の人たちとつながり、全てを自然に委ねるお産をすると、痛みも苦しみも超越した恍惚感に至り、出産後の母子関係や、家族関係も豊かになるというのです。
出産後の「おむつなし育児」についても詳説し、おむつが全く要らないというのではなく、現代の子育てはおむつに頼り過ぎていないか、と問いかけました。「赤ちゃんの排泄のタイミングを読み取ろうと気持ちを寄せることで、親子を結ぶ見えないつながりを自覚するようになります」と、研究の成果を発表しました。
「現代は自然なお産から遠ざかっているのではないか」という問題定義によって、豊かなお産とは何かを改めて考える機会となりました。
第2 部は、丸山理事長と松本専門研究員によるトーク。戦後、消失した日本伝統の一つに出産があります。「過去の文化、風習から学び、いかに現代に活かし、未来につなげていくか―。それはお産についても同様です」と開催趣旨を再度述べて閉会しました。