倫理研究所

大規模調査

大規模調査とは

倫理観(倫理意識)を数値化する

従来、倫理観についての議論は、ほぼ大半が、倫理観崩壊の危機やその必要性の連呼に留まっており、日本人の倫理性が絶対値としてどの程度の水準であるのか、さまざまな倫理観のうちどの部分が危機にあるのかについて、客観的な指標を示すことができていませんでした。
倫理文化研究センターによる大規模調査プロジェクトは、日本人の倫理観を数値化する作業を行ない、これを定点観測することで、倫理観の推移を客観的に把握することが可能となると考えています。

倫理観(倫理意識)を議論するための
共通の土俵を作る

倫理観の数値化はこれまでの論議を大きく前進させると考えます。そして、個別の倫理観の評価だけに留まらず、倫理観の現状を俯瞰し、その全体像を改善可能なアイデアや施策に落としていくことが重要であり、そのためには、教育、行政、メディアをはじめ多くの分野の人々が建設的な議論に加われるような共通の土俵が必要です。
本調査プロジェクトでは、基本的な分析フォーマットを設定して日本人の倫理観(倫理意識)の現状を俯瞰可能にし、これを通じて倫理観を正しく評価していきます。

調査体制

調査主体 : 倫理研究所倫理文化研究センター

分析作業 : 倫理研究所倫理文化研究センター(フェロー海野裕)

海野裕(うみのゆたか) 早稲田大学教育学部教育学科卒業。株式会社博報堂を経て、インターテクスト代表。企業や自治体等のマーケティング戦略展開を広く支援。倫理観推移の多角的な調査を企画実施する。倫理研究所倫理文化研究センターフェロー。

倫理25/EPMについて

倫理25とは

倫理文化研究センターでは、古今東西の倫理観、道徳、徳目の収集と分析を行ない、一般に「倫理」とされる内容を25のコンセプト(概念規定)に纏め上げました。
日本人の倫理や徳目に西洋社会の倫理観を加えることで、汎用性の高いコンセプトが開発できたものと考えており、これを利用すれば海外諸国における倫理性の評価も理論的には可能となります。25のコンセプトは「倫理25」と呼ぶこととします。今後の調査はこの「倫理25」の保存状況や機能状況を検証する「コンセプトチェック」の形式を採用します。

仁義礼智などに代表される儒教的倫理観、十戒に代表されるキリスト(ユダヤ)教的倫理観、哲学思想に通底する「自己意識」、ベンジャミン・フランクリンやウィリアム・J・ベネットが編集した徳目、聖徳太子の十七条憲法に象徴的な日本的処世術などを加えて極めて広範なリサーチの結果を分析し、取り纏めた「倫理25」は以下のとおりです。

    • 01
    • 父母を敬うこと
    • 02
    • 祖先や神仏を敬うこと
    • 03
    • 妻や夫を尊重すること
    • 04
    • 兄弟姉妹は仲良くすること
    • 05
    • 目上の者を尊敬すること
    • 06
    • 礼儀正しくあること
    • 07
    • 冷静であること
    • 08
    • 思いやりを持つこと
    • 09
    • 勤勉であること
    • 10
    • 和を重んじること
    • 11
    • 他人を信じること
    • 12
    • 他者を尊重すること
    • 13
    • 物を大切にすること
    • 14
    • 困難を喜ぶこと
    • 15
    • 嘘をつかないこと
    • 16
    • 決断すべきときに決断すること
    • 17
    • 実行すべきときに実行すること
    • 18
    • 自分を信じること
    • 19
    • 希望を持つこと
    • 20
    • 勇気を持つこと
    • 21
    • 節制すること
    • 22
    • 広く多く学ぶこと
    • 23
    • 主体性を持つこと
    • 24
    • 他を羨まないこと
    • 25
    • 命を尊重すること

EPM
(Ethics Portfolio Matrix)

「倫理25」の受容性評価は基本的に以下の3軸で行なっています。
第1軸:個人的共感度(対象者個人として「倫理25」にどの程度共感できるか否か)
第2軸:社会的必要性(個人を離れ、他の人たちには守って欲しい倫理か否か)
第3軸:個人的実践度(共感性の多寡はともかく、個人的に実践可能な倫理か否か)

第1軸と第2軸の組み合わせにより「倫理25」の保存状況は次の4象限で把握されます。

  1. 01 – 個人的共感性(高い)×社会的必要性(高い):有効な倫理
  2. 02 – 個人的共感性(低い)×社会的必要性(高い):力を失いつつある倫理
  3. 03 – 個人的共感性(高い)×社会的必要性(低い):新たな価値観の兆しといえる倫理
  4. 04 – 個人的共感性(低い)×社会的必要性(低い):過去の遺物になってしまっている倫理

「倫理25」は2軸で評価され、それぞれの値によって各象限のいずれかに付置されることになります。
この4象限で倫理25を布置する手法をEPM(Ethics Portfolio Matrix)と呼びます。研究センターでは、倫理に関する様々な議論を戦わせる土俵として、このEPMを提案します。

本の紹介

2005年から開始した大規模調査の結果をわかりやすく小冊子(ブックレット/B6判変形/定価500円)にまとめています。客観的な数値をベースとした考察はシンプルでありながら、日本人のこころの深奥に迫ります。

「心を探る」生き方リサーチ① こころに効くお金の話

「心を探る」生き方リサーチ①
こころに効くお金の話

2006年「金銭の倫理」に関する大規模調査の結果をペースにした小冊子です。お金にはどのような性質があるのか、お金と幸福との関係性、お金との向き合い方などを調査し、取りまとめました。

「心を探る」生き方リサーチ② あなたも私も継承者

「心を探る」生き方リサーチ②
あなたも私も継承者

2008年「継承の倫理意識」調査の結果をベースにした小冊子です。 家や家業、事業など継承が問題となる対象は多く存在します。日本人がこうした継承についてどのような意識と行動を示しているか、 調査し、取りまとめました。

「心を探る」生き方リサーチ③ いのちの扉の向こう側

「心を探る」生き方リサーチ③
いのちの扉の向こう側

2009年「日本人の死生観調査」調査の結果をベースにした小冊子です。 死者との付き合い方と死者との交感の実際について調査し、その結果をまとめるとともに、現代を生きる私たちの心の在り方について考えます。

「心を探る」生き方リサーチ④ 日本人のゆくえ

「心を探る」生き方リサーチ④
日本人のゆくえ

2005年の第1回倫理意識調査と2010年に実施した第2回調査の時系列比較による調査報告です。 この5年間で日本人の倫理観はどう変わったか。数字の変化の把握とともに、その社会背景と今後の動向について考察します。

「心を探る」生き方リサーチ⑤ 日本人の底力

「心を探る」生き方リサーチ⑤
日本人の底力

2011年「日本人らしさとは何か」調査の結果をベースにした小冊子です。 日本人は日本人の特性をどうとらえているか。そして21世紀のあるべき日本人像をどう望んでいるか。それらを数値で明らかにしながら、今後の日本と日本人について考察します。