倫理研究所

活動報告
2019.5.7

第23回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」入選速報

 第23回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」には、しきなみ賞347名、しきなみ新人賞141名、合計488名の応募がありました。しきなみ選者による予選を経て、4月に開催された最終選考会において、「しきなみ賞」は「最優秀賞」(2名)、「優秀賞」(3名)、「佳作」(13名)、「しきなみ新人賞」は「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(13名)の入賞作品が決定いたしました。

 

 

「しきなみ賞・しきなみ新人賞」とは・・・

 しきなみ短歌会員を対象とし、「しきなみ賞」「しきなみ新人賞」の2部門からなる賞。 作歌の練磨・研鑽に努力している会員に対して、評価の機会を提供することにより個々の会員の作歌力の向上に資するとともに、若い才能の発掘・育成を目的としています。

 


 

しきなみ賞

 

◆◆◆ 最優秀賞 2名 ◆◆◆

 

「相談室にて」
古川幸子(熊本・平井・真砂集)

放課後の遅きに生徒は訪ね来て師にも親にもいじめは言えぬと

女生徒はいじめ受くるを話せない父に責めらるる母を気遣う

「みやげなど何もいらない」留守多き親に淋しさ叫ぶ生徒は

学校には行けぬ家にも戻れない海辺に佇む生徒に添いぬ

級友をいじめてしまったと中学生その胸のうちふるえて語る

 

「君に幸あれ」
神谷優子(沖縄・石嶺・群蛍集)

受け入れることなどできぬ子の病涙こらえてただただ祈る

点滴に抗がん剤の文字ありて吾子は知るのか己の病を

枕辺の抗がん剤で抜けし毛を吾子はローラー転がし拾いぬ

待つ君の喜ぶ顔を見んがため好物作り病室訪ねる

くさまくら旅立つ君に幸あれと高校生活謳歌したぼり

 

 

 ◆◆◆ 優秀賞 3名 ◆◆◆

 

「吾子を偲ぶ」
城之内和子(茨城・知手・飛雲集)

プログラマー目指して睡眠減らしつつ日々独学に励みし吾子よ

喘息の発作に耐えて日課となるパソコン操作夢に向かいて

食細くもカレーライスをお代わりし笑顔の夕餉次の日吾子逝く

「お母さん」大きく手を振りにっこりとペダル漕ぎ来る吾子の夢見る

逝きてより二十余年を経る今も吾子の友らと会えば恋しき

 

「ちからの泉」
関口保子(群馬・前橋中央・飛雲集)

含ませて子等を育てた我が胸をおそう病魔を受け入れられぬ

乳癌と告げられ心萎えてゆく手を伸べ夫は背なを撫でおり

唇をかみしめ天を見上げても涙溢れて溜め息ひとつ

寄り添いて励ましくれる夫や子は萎えた心のちからの泉

受け入れて治療し歌を創りたい家族に贈る感謝の歌を

 

「風をあつめて」
本多陽子(熊本・長嶺・群蛍集)

スカートをもう何年もはいてない施設には恋どこにもなくて

健常者の若い女性がまぶしくておしゃれな店の光る窓見る

母さんが月謝出すから行ってみてこわごわ通うメークの講座

会う人にきれいになったと褒められるメークの講座皆勤しおり

グリーンの巻きスカートでスタバへと足に五月の風をあつめて

 

 

◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆

・母訪(と)へば今も変わらぬ叱り声車椅子押す吾を見上げて
/村重千代美
(北海道・札幌東・真砂集)

・夢叶い奥能登めぐり千里(ちり)浜のなぎさドライブ夕日に染まる
/関 良子
(茨城・新荘・白光集)

・物置きの黒板の文字いとおしく唯一残れる父の文字なり
/小松崎京子
(茨城・西原・飛雲集)

・健やかに生きたかったねごめんなさい永久(とわ)の眠りにつきし娘よ
/関口喜美子
(茨城・知手・群蛍集)

・新た世に祈り叶うと予祝して初日の光全身に受く
/荻野鈴子
(茨城・知手・群蛍集)

・目も見えず耳も聴こえず鼻効かず長生き悲し愛犬「もも子」
/山﨑康子
(茨城・大貫・飛雲集)

・そよ風にベビーカーから覗きいる素足のあんよ未来を語る
/内池リヱ
(埼玉・宮町・真砂集)

・鬼(おに)蜘蛛(ぐも)は自慢の巣を張りじっと待つかかりし獲物は大きな枯れ葉
/島田悦子
(埼玉・忍・真砂集)

・いのちとはいかなるときに発光す水に映れる銀河見てゐつ
/大場ヤエ
(千葉・酒々井・群蛍集)

・新聞の隅からすみと読みつくしなんでも博士白寿の姑は
/星 豊子
(神奈川・鴨宮・群蛍集)

・モーニングコールを鳴らす午後八時LINE通話で時差飛び越える
/大山 育
(愛知・吉田・真砂集)

・朝風呂でつややかな肌に薄化粧八十八歳きれいよ母さん
/鎌谷理恵
(兵庫・西宮中央・真砂集)

・脳動脈瘤と言われて凍てつく我の手を黙って強く握る夫の手
/吉見文代
(熊本・北の丸・飛雲集)

 


 

しきなみ新人賞

 

◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆

 

「ぼくのおじいさん・おばあさん」
立石浩一(宮城・宮城法人・青泉集)

餅つきの杵を振る祖父キリリとしいつもと違う目が真剣だ

世の中のためになれよと祖母の言う幼きあの日湯船の中で

ぼくのこと連れまわしては叱られて祖父は母には頭上がらず

帰省したぼくに食べよと茶碗蒸しおはぎになまこ酢祖母の手料理

いっぱいの苦労悲しみ受け切って慈愛に満ちた祖父母の笑顔

 

 

◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆

 

「産婦人科外来」
兼平純子(岩手・盛岡・青泉集)

制服に袖を通しし刹那より看護補助者の貌と変はりぬ

今日もまた待合室に隣り合ふ生れくる命去りゆく命

夜勤明けに続けて診察する医師の病める人への眼ざし優し

待ちに待ち懐妊成せる人ありて無事の十月(とつき)を我も願へり

生れしよりひと月過ぐるみどり子を抱きて祈る幸多き道

 

「青春の日の交換ノート」
吉田惠一(神奈川・溝の口・青泉集)

先づ書棚終活せむと清むればいと懐かしきノート出で来ぬ

褪すれども半世紀経しノートには我が名と並び妻の旧姓

ひもとけば時空を越えて蘇るあの日あの時ノートの記述

若き日に交はししノート繰り読めば二人の夢の溢るるばかり

今もなほ変はらぬ思ひ書かれをり青春の日の交換ノート

 

 

◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆

・母となる機会のがした我の事慕ってくれる愛しき姪よ
/佐藤克代
(岩手・宮古・青泉集)

・いかせんべい力を込めて食みたればずっと変わらぬ宮古の味わい
/吉田ひろみ
(岩手・宮古・青泉集)

・虐待を受けて育ちし少年の心の闇に光射すを祈る
/原 保雄
(茨城・しづく・青泉集)

・生前に夫が愛用マグカップ吾の冷たい手を温める
/寺田美佐惠
(神奈川・三春・青泉集)

・亡き母の好みて着たる銘仙の着物に残る染(し)みの懐かし
/内田陽子
(神奈川・鴨宮・青泉集)

・一面のもえぎ色なる茶畑に刈り機の音のみ響き渡れり
/本間あけみ
(静岡・磐田中央・青泉集)

・カタバミの根はしつこくて夫にある病巣思い鍬振り下ろす
/山田陽子
(京都・石原・青泉集)

・九十余り鏡なん度も覗く母可笑しくもあり可愛くもある
/魚住桂子
(兵庫・平荘・青泉集)

・生まれくる孫に小さき椀選ぶ賢治ゆかりの民芸店に
/松尾美重子
(兵庫・平荘・青泉集)

・わずかでも動き始めた足さすり励むリハビリ気持も前に
/岩田恵子
(岡山・児島・青泉集)

・先生と呼ばれ振り向く教室にダイヤに負けぬ笑顔が揃う
/小川ひろ子
(熊本・瓦屋・青泉集)

・飼い猫のりりと暮らした二十二年最期は秋の夜わが腕のなか
/秋吉サカヱ
(大分・亀川・青泉集)

・繰り返し母の短歌を読みおれば山雀(やまがら)鳴きて木葉をゆらす
/田中優子
(鹿児島・西伊敷・青泉集)