第25回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」入選速報
第25回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」には、しきなみ賞432名、しきなみ新人賞160名、合計592名の応募がありました。しきなみ選者による予選を経て、4月に開催された最終選考会において、次の賞が選ばれました。「しきなみ賞」は「最優秀賞」(該当者なし)、「優秀賞」(3名)、「佳作」(16名)、「しきなみ新人賞」は「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(3名)、「佳作」(13名)の入賞作品が決定いたしました。
「しきなみ賞・しきなみ新人賞」とは・・・
しきなみ短歌会員を対象とし、「しきなみ賞」「しきなみ新人賞」の2部門からなる賞。 作歌の練磨・研鑽に努力している会員に対して、評価の機会を提供することにより個々の会員の作歌力の向上に資するとともに、若い才能の発掘・育成を目的としています。
しきなみ賞
◆◆◆ 優秀賞 3名 ◆◆◆
「園児たちと蚕」
大場麗子(宮城・石巻・群蛍集)
「きれいだね絹って生きてるあったかい」園児は蚕のいのちを見ている
「糸になる大きな仕事を決めたんだ」飛べぬ蚕を園児は歌う
お蚕は「一ぴき・一個」と数えない園児はこだわる「
「ぼくたちのために命をありがとう」園児は蚕に手を合わせいう
園児見る真白き繭に身をつくし蚕のみたまが羽ばたき逝くを
「偲ぶ」
矢作ゆかり(埼玉・領家・飛雲集)
点滴と酸素吸入たずさえるこの子の全て受けとめ抱く
病棟にトトロの曲が流れてる歩こう歩こう子へ唄いたり
冷えきった子の左手を握りしめ温まるまで繋がりており
子の胸の上がり下がりの儚さを見つめるばかり付き添いの午後
化粧すら知らずに逝ってしまう子の閉じる口へと紅をさしたり
「夫とのキャッチボール」
横山梓(愛知・吉田・飛雲集)
秋晴れの風爽やかな公園でキャッチボールす夫と一緒に
力込め投げたボールも何のそのキャッチする夫頼もしきかな
今もキュン夫の美点はTシャツの袖からのぞく逞しき腕
キャッチしたボールは吾のグローブにピタリ収まる夫の気配り
結婚し十年分の「ありがとう」言葉に代えてキャッチボールす
◆◆◆ 佳作 16名 ◆◆◆
・ふり返り吾待つ夫の肩先に静かにしずかに梅の花散る
/野並スミ子(埼玉・さいたま南法人・真砂集)
・一心にぜんそくの子の背をさする他に術なき若き母われ
/計屋珠江(神奈川・横浜北法人・真砂集)
・透明な子宮となりて保育器はチューブをまとふ児を守りゐる
/兼平純子(岩手・盛岡・飛雲集)
・そそくさと自分でお替わり何回目ハヤシライスは子らの好物
/大瀬木佳江(宮城・仙台・飛雲集)
・生き写し夫のスーツをまとう子の成人式を墓前に告げる
/和田晃子(宮城・石巻・飛雲集)
・嫁いだ日姑から貰いし包丁の五十年経ち半分となる
/河合和子(茨城・新荘・群蛍集)
・タクシーの営業許可を得た息子足の障害めげずに自立す
/阿部ムツ子(新潟・表町・真砂集)
・恋人がやがて妻となり母となる今老いてまた君は恋人
/小山隆男(新潟・新潟江南・真砂集)
・果てしなく広ごる青空仰ぎつつ最晩年を生きんと思ふ
/大場ヤエ(千葉・成田・群蛍集)
・窓枠にジッと動かぬカマキリに朝々声かけなじみとなりぬ
/新谷美智子(東京・堀切・白光集)
・右半身不自由となって六年の妻と間近の金婚式待つ
/永井順(東京・王子神谷・群蛍集)
・待ち侘びた吾子の誕生胸に抱き触れ合う肌に鼓動感じる
/石原優(大阪・八尾市南・飛雲集)
・伝統の登りの窯を守りぬくひとすじの道この道を行く
/井上泰秋(熊本・平井・真砂集)
・親として不甲斐なき吾を頼らずに一人で決めし転職の娘よ
/大森佳代(大分・東大分・真砂集)
自分には過ぎたる妻の夢を見る元気で達者いつも前向き
/長友喜八(宮崎・志比田・飛雲集)
・口癖に先に逝くなと言いおいて潔く夫はピリオドを打つ
/野﨑加代子(鹿児島・長里・真砂集)
しきなみ新人賞
◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆
「思い出の冬の北太平洋航路」
堀江昭良(千葉・流山・青泉集)
大波が船体呑みに襲い来る一万馬力で立ち向かうなり
荒天の海原からの贈りもの飛魚二匹デッキに跳ねる
時化は去りエンジン音も軽やかに明日は入港横浜港に
船乗りになり初めての太平洋十七歳の夢は世界を
◆◆◆ 優秀賞 3名 ◆◆◆
「父」
坂本好子(岩手・宮古・青泉集)
口答え許さぬ父の顔を見ず不満かかえて思春期過ごす
式場で相合傘の入場後無言で海を見つむる父あり
盆休み孫に囲まれピースする見慣れぬ父の満面の笑み
今だから遺影の写真見られるも頑固おやじと避けててごめん
子育てし父の気持ちがわかる今仏壇に花たむけて合掌
「秋から春へ」
田辺清子(広島・十日市・青泉集)
雨上がり大根播いて四日目に双葉かわいく整列しおり
草取れば球根コロコロ飛び出たりそっと埋めつつ春まで寝てね
一面に銀世界なる菜園のこのあたりかと大根探る
畑起こし目ざめたばかりのアマガエル寝ぼけ眼で我を見上げる
節分草初恋の香とう顔寄せば遠い昔がほのかに匂う
「味噌仕込み」
酒井智子(福岡・三橋・青泉集)
味噌蔵に仕込みの季節活気づき代々受け継ぐ変らぬ味を
洗米の水の冷たさ身にしみる今日も一日の安全祈る
生きている麹の力神秘的甘き香りにしばし酔いしれる
慣れぬ手で作業の嫁の愛おしく嫁ぎし頃の我と重なる
◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆
・息子にも野球の神が舞い降りて試合を決めた最後の打席
/伊藤秀樹(宮城・仙南法人・青泉集)
・新築に移るも母は「さびすいなァ」仮設のせまさをなつかしみつつ
/三戸部志信(宮城・仙南法人・青泉集)
・独り居の母気づかいし日は遠く墓前に白き雪は降り積む
/狩野初恵(群馬・前橋中央・青泉集)
・枕辺に響いて静まる新聞のポストに落ちる朝明けの音
/須山紀代美(東京・女塚・青泉集)
・成人の晴れ着を選んでくれた養父(ちち)写真の中で吾と胸張る
/中村恵津子(静岡・狩野川・青泉集)
・監督が辞めるってこと知らなくて戦いぬいた最後の大会
/小林莉々子(静岡・富士宮・つばさ)
・車椅子社交ダンスを母子でする寝たきりであれ満面笑顔
/小出朋子(愛知・東・青泉集)
・ブロックは三歳吾子の自信作尻尾二つの青いライオン
/ 不破大輔(岐阜・長森・青泉集)
・子供連れ集まる機会増えてきて母らしくなる自分に出会う
/芦高明子(大阪・八尾市南・青泉集)
・おいしいな夫の作ったシチュー食べ悪くないかも休日出勤
/中西裕子(徳島・上八万・青泉集)
・夢だったテレビ電話が現実に孫の顔見て笑顔になる吾
/小松淳子(高知・福井・青泉集)
・濁流が街を飲み込む景色まで思い出までも球磨川の中へ
/椎葉房次(熊本・瓦屋・青泉集)
・年賀状書ける幸せ筆の先浮かびくる顔一言添えて
/松林由美子(大分・東大分・青泉集)
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一般社団法人 倫理研究所 文化部
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