第28回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」入選速報
第28回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」には、「しきなみ賞」398名、「しきなみ新人賞」166名、合計564名の応募がありました。しきなみ選者による選考を経て、4月に開催された最終選考会において、「しきなみ賞」は、「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(13名)、「しきなみ新人賞」は「最優秀賞」(2名)、「優秀賞」(1名)、「佳作」(13名)の入賞作品が決定いたしました。
「しきなみ賞・しきなみ新人賞」とは・・・
しきなみ短歌会員を対象とした賞。 作歌により心境の錬磨・研鑽に努力している個々の会員のさらなる作歌力の向上に資するとともに、若い才能の発掘・育成を目的としています。
しきなみ賞
◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆
「歌詠みて旅立ちし母」
前屋敷豊子(鹿児島・田崎・真砂集)
医師よりの余命三月の宣告に静かにうなずき礼述べる母
ガン告知静かに受け止め歌を詠むいつもと変わらぬ母安らけし
投稿を代筆しつつ涙する死を目前の眠る母みて
旅立ちのひと月前に投稿せし母の遺詠は優しさ充ちる
残されし母の短歌に詠われた吾への情愛に胸あつくなる
◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆
「年子の弟」
中野マックス(米国・南カリフォルニア・飛雲集)
弟よ一つ違いの弟よ小さい頃はいじめてごめん
弟よどこか嫉妬してたんだ無邪気に母に甘える君を
弟は幼い頃から平和主義それがどうにも気に入らなくて
弟よ許しておくれただ君の自然な優しさ羨ましくて
弟よ大人になった今だから素直に言える「尊敬してる」
「ビバ・還暦級野球」
真壁勝美(沖縄・平良・飛雲集)
イチローの「レーザービーム」思いつつ打球よ来いと守備に着きたり
天を突き破るかのごと打球来る眼見開きグラブを伸ばす
見送りし外角低目の「ストライク」何度も脳裏に再生される
はからずも二死満塁の打席立つ息を凝らしてピッチャー見つめる
生涯で最後の打席と気負いあり打つ気の満ちてフルスイングす
◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆
・父さんが飛ばしてくれた飛行機を声出し追ったあの冬日和
/立石浩一(宮城・宮城法人・真砂集)
・桃色の頭巾が嫌だとごねる祖母昔のモガは美意識高い
/佐藤恭子(宮城・宮城法人・飛雲集)
・幼き日祖母に貰いし五円玉片手に握り目指す駄菓子屋
/尾崎育子(宮城・大崎・飛雲集)
・吾にしかできぬ仕事と心決め陣痛室にて深呼吸する
/大橋葉奈子(埼玉・蕨・飛雲集)
・「帰るけど元気でいてね」吾の言うに聞こえぬふりか父は黙する
/内池リヱ(埼玉・宮町・群蛍集)
・身罷りし冷たき妻の頬に触れこの温もりを受けよと押し当つ
/石渡貫一郎(千葉・郡本・群蛍集)
・ひそやかに月が痩せゆく冬の夜寒さのにほひを誰に語らん
/清 百枝(東京・女塚・真砂集)
・君逝きて五年もすぎて見つかりし初デート記す大学ノート
/藤原由子(神奈川・平塚・群蛍集)
・食べこぼし床拭きながら夫を見る老いもかわいい笑える朝餉
/永武敦子(兵庫・西宮中央・飛雲集)
・たまご焼き五歳の孫が挑戦すそっと流し込む真剣な顔
/小松淳子(高知・高須・飛雲集)
・「父さんは母さん笑わす為に居る」吾子の言葉に少し頷く
/田中コトミ(佐賀・日の出・群蛍集)
・自らの片目をやると言いくれし亡き舅に感謝と幾度も姑は
/中尾宣子(長崎・川棚・飛雲集)
・懐にわずかの米を握りしめ戦下を姑は愛し子守る
/入口秀子(熊本・あさぎり・群蛍集)
しきなみ新人賞
◆◆◆ 最優秀賞 2名 ◆◆◆
「大工の父さん」
江上愉美子(神奈川・相模原みなみ・青泉集)
えんぴつを右耳にかけ図面引く父の仕草を真似た幼日
鋸屑の匂いさせたる父さんは鑿や鉋を巧みに使う
晴れた日に現場へ向かう父さんは地下足袋履いて颯爽とゆく
棟上げに大工の父は揚々と特別な日の先頭に立つ
職人の父の口ぐせ「並じゃ並」道を極めんと己を鼓舞す
「吾子逝く」
齊木康乃(愛知・天白・青泉集)
ベッドの子気管切開声の消えそれでも生きる目に力あり
ベッドの子生きるちからに祈る妻あと少しだけもう少しだけ
ベッドの子朝陽とともに召され逝く立ちつくす吾夢か現か
吾子帰るあかるい部屋のひと隅に嬉しそうな笑顔の遺影
吾子の逝く星ひとつ指し孫は言うあそこにいるよキラキラしてる
◆◆◆ 優秀賞 1名 ◆◆◆
「師の書を追う」
日下しずえ(宮城・石巻・青泉集)
一回の墨で六文字十分に書ける手本を目の前に見る
六文字の流れとバランス絶妙な師の筆先を熱い目で追う
白と黒の文字と余白が創り出す一枚の書の絵画見るごと
ただ一度墨をつけたら迷いない師の運筆にさわやかな風
書くことを毎日続けるその先に私が目指す書はきっと有る
◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆
・幾年もこの手に抱く日待っていた君生れし幸我をつつみぬ
/菅原さち子(宮城・仙南法人・青泉集)
・我を捨てて夫に寄り添うと決めた日は声も言葉も穏やかなりぬ
/十河慶子(東京・湯島法人・青泉集)
・挽歌とはこういうことか詠むほどに心の澱が透明になる
/佐々木麻央(東京・湯島法人・青泉集)
・幼児を二人残して夫は逝く四十回忌に孫ははたちに
/大吉峰子(茨城・飯島・青泉集)
・ブランコに孫と並んで立ち漕ぎす恥ずかしさなど今日は飛んでけ
/中山泰子(埼玉・蓮田黒浜・青泉集)
・リンパ腫を小声で告げて涙ぐむ妹のごと睦みし姪が
/矢作幸子(埼玉・鳩ヶ谷南・青泉集)
・早朝の吾子らの声は賑やかで二度寝知らずの目覚まし代わり
/田畑あすか(愛知・安城・青泉集)
・本震が来たと同時に飛び入る娘と二人テーブルの下
/山田美喜(石川・金沢・青泉集)
・元日の夕方四時の大地震すぐに浮かぶは能登島の母
/納屋成美(石川・金沢・青泉集)
・手を握り「私がわかる」と訊ねたらかすかに頷き微笑む義母よ
/田畑成美(兵庫・寺家町・青泉集)
・どんどやの点火を担う小学生年年毎に減り村人見守る
/久富文美世(熊本・菊池・青泉集)
・夜遅く一人夕食たべる父言葉もかけず黙って見ていた
/熊谷三枝子(熊本・平井・青泉集)
・朝晩の寒さに体凍らせて手袋よりも君の手をとる
/鈴木崇司(熊本・瓦屋・青泉集)
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