倫理研究所

活動報告
2022.5.9

第26回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」入選速報

第26回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」には、「しきなみ賞」413名、「しきなみ新人賞」189名、合計602名の応募がありました。しきなみ選者による選考を経て、4月に開催された最終選考会において、「しきなみ賞」は、「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(14名)、「しきなみ新人賞」は「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(13名)の入賞作品が決定いたしました。

 

 

「しきなみ賞・しきなみ新人賞」とは・・・

しきなみ短歌会員を対象とし、「しきなみ賞」「しきなみ新人賞」の2部門からなる賞。 作歌の練磨・研鑽に努力している会員に対して、評価の機会を提供することにより個々の会員の作歌力の向上に資するとともに、若い才能の発掘・育成を目的としています。

 

 


 

しきなみ賞

 

◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆

 

「林業への道」

青木トシ子(東京・三軒茶屋・群蛍集)

西伊豆の山の仕事を選ぶ孫二十二歳の旅立ちの時

チェーンソー担ぐ孫の背頼もしく自信に満ちた山の男ぞ

急斜面足を踏ん張り間伐の材木運ぶ孫は雄々しく

材木を重機はガバッとつかみ上げダンプに積み込む孫の逞し

間伐の檜の跡に光射し林業も孫も未来は明るい

 

 

 

◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆

 

「亡き夫との会話」

小野順子(宮城・石巻・群蛍集)

亡き夫へ「頑張ります」と言うわれにやり過ぎるなよと目元が笑う

「ありがとう」と一日一度の墓参り夫に護られ生かされている

八十路(やそじ)ゆえ動きの鈍さ増すわれを労るような亡き夫の面

特老に入所の娘を案じてかまだまだ来るなと亡き夫はいう

六十代の夫の遺影と話す時われも彼の日に戻り若やぐ

 

 

「漁師の父よ」

大島安徳(鹿児島・龍郷・白光集)

笹舟に帆をあげ海へ流すなり漁師の父は幼き吾と

沖つ辺にあかねの雲のただよへば漁師の父の船は出でゆく

釣りとふは餌にて釣るな潮で釣れ漁師の父の言葉かみしむ

この吾を学問の道へ押しくれし読み書きおぼろな漁師の父は

荒磯(ありそ)打つ波の()遠く聞こゆる夜半漁師の父の面輪()ちくる

 

 

 

◆◆◆ 佳作 14名 ◆◆◆

・何もかもできぬ事実をうつ病のさなかにしかと受け容れなければ

/丸小拓将(北海道・札幌東・飛雲集)

・両脇に娘ふたりをぶら下げて児ら喜ばす息子の筋トレ

/矢口さく(群馬・赤生田・群蛍集)

・炎天下四番を背負い奮い立つ孫は夢追う高校球児

/関口保子(群馬・前橋中央・真砂集)

・副作用に苦しむ夫は涙せし吾にひと言「泣くな」と言いぬ

/小木順子(埼玉・蓮田黒浜・飛雲集)

・花束のように四人の吾子抱え両手記憶す愛のかたちを

/芳川可奈子(埼玉・蕨・飛雲集)

・花灯路そぞろ歩める京の宵忘れたはずの過去が浮かびぬ

/由利シズエ(埼玉・柿沼・真砂集)

・若い頃バイオリン背おい母のもとへ何を奏でた無骨な父は

/大浦まゆ美(大阪・伏虎・群蛍集)

・断乳の初日は夫が寝かしつけ十分続けてふるさと歌う

/芦高明子(大阪・八尾市南・飛雲集)

・病癒え警ら隊へと戻る子の動作に見ゆる警官魂

/熊本ふみか(福岡・櫛原・群蛍集)

・夕焼けを悲しい色といふ吾子は未だ一人身四十路を生きる

/橋本多實子(熊本・水前寺・群蛍集)

・母さんは帰省するたび()のもとへ「汽車賃あるね」と財布持ちくる

/佐藤美代子(熊本・古閑中・群蛍集)

・とがってた生徒も吾も垣根とれ挨拶かわし一日スタート

/小川ひろ子(熊本・瓦屋・飛雲集)

・母の世話姉の苦労を見聞きして吾に出来るか老々介護

/甲斐光代(大分・大分中央・真砂集)

白髪(はくはつ)になったよ私も仏壇の夫の遺影と釣り合うように

/柴田好美(大分・亀川・真砂集)

 


 

しきなみ新人賞

 

◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆

 

「義父」

浅野勝広(宮城・仙台・青泉集)

目の見えぬ義父を連れ出し鳴子峡こころで見てるか紅葉狩りの旅

見えぬ目を静かに閉じてピアノ聴く義父の横顔をキャンドル照らす

義父の手にあんぽ柿を手渡せば見えない目元がしばし綻ぶ

目の見えぬ義父にはラジオがお友達雪降り初めしを知るか知らずか

目の見えぬ義父に悪態ついたことこころに詫びて着替えを手伝う

 

 

 

◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆

 

「紅花エゴノキの四季」

加藤なほ(神奈川・相模原みなみ・青泉集)

義父植えしエゴノキの花咲き匂い紅雨(こうう)のごとく地面を染める

樹上にて居眠りをする蝸牛背中の殻に泉湛えて

木の影で羽繕いする雉鳩にカラスアゲハが寄り添う正午

雉鳩がそろりと枝をたわませて僅かに残るエゴの実つつく

裸木に四十雀(しじゅうから)たち鳴き集い音なき世界に彩りそえる

 

 

「錦鯉」

 岡本多賀子(岡山・児島・青泉集)

ぴくりとも動くことなく錦鯉大寒の池春を待つらし

大寒の凍れる池の錦鯉色鮮やかに朝日浴びたり

春近し後楽園の池の中錦鯉群れ餌探すなり

水面に梅の花びら舞い降りて錦鯉のみ春を知るなり

水温み音立て泳ぐ錦鯉風の匂いと水苔の色

 

 

 

◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆

・ふるさとの雄勝硯にわが名前刻んでもらいいのち吹き込む

/菅澤かおり(宮城・仙台・青泉集)

・退職を決意の夫はその夜からうなされることなく寝息安らか

/渡邉美紀子(宮城・仙台・青泉集)

・来る年も借り手の付かぬ空き店舗錆びた鎖に雪降り積もる

/尾崎育子(宮城・大崎・青泉集)

・「寒いねえ」「今日は晴れだよ」五年間息子亡くしてからっぽの部屋に

/矢口恵子(茨城・取手・青泉集)

・離れ住む母にラインす雪かぶる富士の雄姿を凍晴(いてばれ)の朝

/中村京子(埼玉・蓮田黒浜・青泉集)

・庭先に小さき雪のうさぎ居て孫ら二人で作りしものか

/山本多恵子(埼玉・所沢中央・青泉集)

・仕事人今も現役八十二偉大な父を目に焼きつける

/山岸孝幸(千葉・勝田台・青泉集)

・夫亡くし心が冷えて寒々と泣くだけ泣いて悲しみの底

/豊恵子(石川・金沢・青泉集)

・先祖より受け継いできた稲づくり今年もやるぞと八十の夫

/西田美代子(兵庫・志んぐ・青泉集)

・初めて妻の良いとこ百個書き恥ずかしながら誕生日祝ぐ

/藤弘充敏(広島・国泰寺・青泉集)

・「起きてよ」と棺の姑に呼びかける優しさ満ちた九十四歳

/山代万亀子(熊本・平井・青泉集)

・夫急逝涙も出ないただ一人立ちつくしたり病院の廊下

/鈴田美代子(熊本・陣内・青泉集)

・苦しいと言わぬままに逝きし夫言葉に出来ぬ苦しさ伝わる

/笠木栄子(大分・亀川・青泉集)

 

 

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