倫理研究所

活動報告
2023.5.9

第27回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」入選速報

第27回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」には、「しきなみ賞」424名、「しきなみ新人賞」196名、合計620名の応募がありました。しきなみ選者による選考を経て、4月に開催された最終選考会において、「しきなみ賞」は、「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(12名)、「しきなみ新人賞」は「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(13名)の入賞作品が決定いたしました。

 

 

「しきなみ賞・しきなみ新人賞」とは・・・

しきなみ短歌会員を対象とした賞。 作歌により心境の錬磨・研鑽に努力している個々の会員のさらなる作歌力の向上に資するとともに、若い才能の発掘・育成を目的としています。

 

 


 

しきなみ賞

 

◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆

 

「いのち見つめて」

橋本多實子(熊本・水前寺・群蛍集)

半年のいのちと知りし暑き日に兄は自ら遺影作りぬ

メソメソはするなと兄は言い乍らたんたんとする生前整理

ホスピスゆ帰りて家が一番と過ぎゆく秋を兄は眺める

姉のため最後の力ふりしぼり兄は作りぬ廊下の手すり

「ごめんね」と我にことばを残し逝く兄は一生人にささげて

 

 

 

◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆

 

「父を知る」

島田悦子(埼玉・忍・群蛍集)

『ラーゲリより愛を込めて』の映画みる師走の中を夫と連れ立ち

シベリアの抑留兵に父重ねマスクの中はぐしょぐしょになる

シベリアより命からがら帰し父よ四十年よそとせ一度も辛きを語らず

父からの最後に届きし新米の古き荷札は吾の宝物

愛深く辛抱強き亡き父にも一度会いたい語り合いたい

 

「大山珈琲専門店」

大山育(愛知・吉田・群蛍集)

十歳の吾子の挑戦コーヒーのハンドドリップ「母さんのため」

凝り性はどちらに似たか十歳の次男収集コーヒー道具

コーヒーの淹れ方会得吾子店主「大山珈琲専門店」の

「一杯は百二十円」吾子求むコーヒー代は豆買うために

吾子淹れる挽きたて淹れたてコーヒーを待てる時間は平和の証

 

 

 

◆◆◆ 佳作 12名 ◆◆◆

・亡き父の使いし墨と硯より応援の声の静かに強し

/日下修(宮城・宮城法人・真砂集)

・はちきれんばかりにごはんを詰め込んだ母のおいなり器に並ぶ

/北口美幸(北海道・札幌東・群蛍集)

・四十キロ切っちゃったのよ疲れちゃう母の口ぐせ今日も切ない

/大瀬木佳江(宮城・仙台・真砂集)

・待ち侘びた退院の日の車椅子父の重さを愛おしく押す

/和田晃子(宮城・石巻・真砂集)

・ひっそりと瓦礫の向こうに立っていた梢そよがせ一本松は

/朝賀榮子(千葉・北条・白光集)

・父作る番傘蛇の目こども傘商い上手の母売り歩く

/堀江昭良(千葉・流山・飛雲集)

・病院は寂しからんと猫の写真を大きく伸ばし夫に持ちゆく

/鈴木良江(東京・立石・真砂集)

・半世紀妻の支えで乗り越えた定年の日を無事に納める

/小野敏幸(愛知・安城・群蛍集)

・「初孫と酒を飲むため長生きを」義父夢語る目尻を下げて

/横山梓(愛知・吉田・真砂集)

・教え子の妻より訃報届きたり涙あふれて返事の書けず

/古川幸子(熊本・平井・群蛍集)

・米づくり上達せぬが来年は「上手に作る」と夫の意気ごみ

/山上晃子(熊本・瓦屋・飛雲集)

・気を張りて気丈に生きる夫支え吾れも負けじと腕まくりする

/矢野房代(大分・岩屋・白光集)


 

しきなみ新人賞

 

◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆

 

「痩せ猫よ」

中野マックス(米国・南カリフォルニア・青泉集)

冬の朝お勝手小突く痩せ猫よたんとお上がり明日もおいで

どしゃ降りの冷たい雨が続く夜に痩せ猫どこで朝を待つのか

おぉ来たか五日ぶりだな痩せ猫よ心配したぞケガしてないか

三年もエサをあたえているけれど痩せ猫きみは撫でさせないね

ありがとう妻の笑顔が増えたのは痩せ猫きみが通い来るから

 

 

 

◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆

 

「あこがれ」

佐藤恭子(宮城・宮城法人・青泉集)

好きだけど困らせるのは嫌だから春はひそかに沈黙となる

ゆっくりと侵食されるそんな恋いつか全部を食い尽くされそう

この気持ち伝える勇気が持てるまで誰のものにもならないでいて

伝えないつもりでいるのに声音からこぼれ落ちそう「好きの気持ち」

思い出にしたつもりでも逢えばまた滾滾と湧く捨てれぬ気持ち

 

 

「短歌」

谷川陽美(愛知・北・青泉集)

誘われて始めた短歌気がつくと生活の中息づいている

気がつくと指折りながら数かぞえ見ている景色言葉に変える

短歌詠み日々の生活ちょっとした笑い喜び言葉に変える

辛い日は今日一日を振り返り良き事探し短歌を詠まん

短歌誌にの歌見つけニッコリと人に伝わる喜びを知る

 

 

 

◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆

・支えられ守られ障害持つ夫に福祉の仕事続けられしは

/村松紀美枝(神奈川・横浜北法人・青泉集)

・ひとり居もすっかり慣れたと母は言う器一膳流しの隅に

/田口三智子(茨城・新荘・青泉集)

・早朝に試験を受けるパソコンで教員目指し四十の手習い

/薄井知佳(茨城・津田・青泉集)

・葉を落とし木々は届ける柔らかに小さきものへ陽の温もりを

/内藤季代(東京・六郷・青泉集)

・ふっくらとしなった大根漬けこめば糠と塩とは母の塩梅

/渡邉敏子(東京・三軒茶屋・青泉集)

・「まいったな」このひとことでうけとめる癌宣告をうけし夫よ

/平澤恵美子(愛知・栄・青泉集)

・ふるさとの雪け水をすくう手にゆれて浮かぶは母のあかぎれ

/川﨑秀二(岐阜・大垣北・青泉集)

・浩志さんと離婚しかけた過去あれど夫婦で寄り添い今ある幸せ

/松岡あゆみ(大阪・東淀川・青泉集)

・「来年はあげられないよ」お年玉余命知るははの別れの支度

/会田陽子(兵庫・寺家町・青泉集)

・日系人ブラジル人も浴衣着て炭坑節の手拍子揃う

/大塚雄子(熊本・水前寺・青泉集)

・「一緒にパッと逝けたらいいね」と言う我に病の夫は淋しく笑う

/石橋正子(熊本・水前寺・青泉集)

・五歳孫まとわりつくは昼間だけママ見た途端そっぽ向くなり

/眞邉俊子(鹿児島・田崎・青泉集)

・ヒロインを蹴りたおす吾に罵声飛び修羅の一幕客席が沸く

/真壁勝美(沖縄・平良・青泉集)

 

 

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