倫理研究所

お知らせ
2025.5.9

第29回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」入選速報

第29回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」には、「しきなみ賞」380名、「しきなみ新人賞」179名、合計559名の応募がありました。しきなみ選者による選考を経て、4月に開催された最終選考会において、「しきなみ賞」は、「最優秀賞」(2名)、「優秀賞」(1名)、「佳作」(13名)、「しきなみ新人賞」は「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(13名)の入賞作品が決定いたしました。

 

 

「しきなみ賞・しきなみ新人賞」とは・・・

しきなみ短歌会員を対象とした賞。 作歌により心境の錬磨・研鑽に努力している個々の会員のさらなる作歌力の向上に資するとともに、若い才能の発掘・育成を目的としています。

 

 


 

しきなみ賞

 

◆◆◆ 最優秀賞 2名 ◆◆◆

「十歳の悩み」

計屋珠江(神奈川県・横浜北法人・群蛍集)

「学校はあんまり居場所がないんだ」と孫のつぶやき頷いて聴く

からかいや仲間はずれに悩むらし休まず登校する孫なれど

黙々と絵を描くことを杖として孫は辛さに向き合いており

「意地悪をする方が変」きっぱりと言い切る孫に逞しさ見る

十歳の悩みの中でもがく孫吾は寄り添いてただ肩を抱く

 

 

「三原田の農村歌舞伎」

亀田美紀(群馬県・高崎中央・飛雲集)

首回し見栄切る子らの熱演におひねり次々舞台に飛び交う

時折に台詞に詰まる子に寄りて小声で教える声の聞こえる

秋晴れの空まで応援するような歌舞伎演じる子らに吹く風

茅葺の歌舞伎舞台の後ろには赤城の山が大きく青く

客席は地べたに敷かれた茣蓙の上時代を思わす芝居見物

 

 

 

◆◆◆ 優秀賞 1名 ◆◆◆

「相克を忘れて」

兼平純子(岩手県・盛岡・真砂集)

二月ふたつきの入院ののち記憶より吾を消し去り姑帰り来ぬ

なされるがままに襁褓むつきを替へし時黙して姑は天井を見る

生きるための全てを吾に委ねたる姑よあなたは何を思ふか

大雪たいせつの厨に立ちて食細き姑を養ふ粥を炊きをり

相克の日々を忘れて今日よりは介護者として姑と生きゆく

 

 

 

◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆

・妻の美点一日二十個書き綴る涙とまらぬこの三カ月

/立石浩一(宮城県・宮城法人・群蛍集)

・母からの言い置きどおり棺あけ外反母趾を真綿でくるむ

/佐々木麻央(東京都・湯島法人・飛雲集)

・稜線が茜に映ゆる暮れの空卒寿の義母は誕生日に逝く

/中里明子(東京都・昭和・群蛍集)

・留袖が背筋と気持ちを引き締めて娘と歩くバージンロード

/高橋和美(神奈川県・青葉区・群蛍集)

・半壊と自宅の被害告げる友「命があっただけ良かったの」

/平松未貴子(静岡県・狩野川・飛雲集)

・障害の吾子を抱えて食べさせる小さな茶碗一時間かけ

/齊木康乃(愛知県・天白・飛雲集)

・夫逝きて早や十五年凍てる夜は柚子湯に深く身を沈めおり

/浅野伸子(兵庫県・明清・真砂集)

・二人の子三年いて同じ月「母さんごめんな」と我をおき逝く

/川畑とみ江(兵庫県・三木・群蛍集)

・いち早く蕾覗かせ川の辺の古桜すこやか年を越したり

/津田澄子(福岡県・到津・群蛍集)

・三年間口利かぬ子の健康を願いて今日も夕餉の仕度

/田中コトミ(佐賀県・日の出・群蛍集)

・「そばに居たい」只それだけで何もかも捨てて嫁ぎし人吉の町

/橋本多實子(熊本県・水前寺・白光集)

・左きき直す為にと始めたる書道続けて六十八年

/福原えり子(熊本県・古閑中・白光集)

・マヒ残り落ち込む夫をくすぐって無理に笑わせ明るくふるまう

/黒枝知恵美(大分県・岩屋・真砂集)

 


 

しきなみ新人賞

 

◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆

「遠き日」

恒本眞弓(兵庫県・明清・青泉集)

夜なべして病身の母の縫いくれしフリルのゆれる赤きスカート

われのため裸電球ひきよせて布のカバンを父は縫いたり

ちゃぶ台を囲み六人晩餉とる入学前夜の温し芋がゆ

我ひとり向かう入学式の朝半身おこし母は見送る

「呼ばれたら元気に返事するんやで」父は何度も何度も言えり

 

 

◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆

「車椅子」

宮崎康之亮(滋賀県・坂本・青泉集)

車椅子暑さ寒さに負けぬけどやはり勝てない雨降りの日は

車椅子バスにも乗れる電車にも人に迷惑かけぬようにと

我が足の代わり努める車椅子何も言わずに感謝感謝と

傾斜ありでこボコ多い我が街の悪路に挑む車椅子行く

車椅子負けずに行こういつの日も明日に向って前向き走る

 

 

「母」

甲斐ヒトミ(熊本県・水前寺・青泉集)

食事中よくこぼす母見ていると幼子の様いとおしさ増す

デイケアを楽しみに待ち週五日感謝忘れず母いきいきと

車椅子立ち上がる母手伝って重さ感じる日々の生活

何度でも同じ事言い笑顔する母の会話にこちらも笑顔

立てずともあと六年で百歳に元気な母は生きる気満々

 

 

◆◆◆ 佳作 13名 ◆◆◆

・吾の右手ブルブルふるえ唄うよう気付けばリズムとるかのごとし

/右城信裕(神奈川県・横浜北法人・青泉集)

・絶望の日々の出来事どれひとつ欠けてもできぬジグソーパズル

/ 高松睦実(長野県・長野・青泉集)

・年りて跡継ぐ人もなくなりてパン屋の看板令和に降ろす

/鈴木良子(埼玉県・所沢中央・青泉集)

・バス停に揃って指折り吹き出しぬ孫は計算我は歌詠む

/金子真理子(東京都・大森・青泉集)

・介護にて疲れし我身長風呂でのぼせるほどに浸ってみたい

/髙井蔦枝(神奈川県・鴨宮・青泉集)

・斑鳩の赤き回廊高き塔若き僧らの砂を掃く音

/加藤照美(神奈川県・南足柄・青泉集)

・父が言うキャッチボールがしたいなあ八十歳の元球児なり

/佐藤麻起子(神奈川県・三春・青泉集)

・独り身の息子は赴任地ウガンダへ笑顔残してタラップのぼる

/木伏妙子(静岡県・富士宮・青泉集)

・寒かろとお地蔵様の足元を落葉でくるみ秋は去りゆく

/中島萬里子(滋賀県・高島南・青泉集)

・報道で知ってたつもりの被災地のリアルに愕然震災遺構

/西本由利絵(大阪府・中央・青泉集)

・ガレージの動かぬバイク眺めつつ気丈な母の面影よぎる

/坂本万実(大阪府・伏虎・青泉集)

・天気良し家事も散歩も皆終えて窓辺に寄りてコーヒータイム

/芳賀妙子(大分県・鶴居・青泉集)

・蒙古斑知らない夫が慌ててる「俺の抱っこが悪かったのか」と

/與儀実可子(沖縄県・真喜良・青泉集)

 

 

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