第30回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」
第30回「しきなみ賞・しきなみ新人賞」には、「しきなみ賞」434名、「しきなみ新人賞」186名、「特別参考作品」43名、合計663名の応募がありました。しきなみ選者による選考を経て、4月に開催された最終選考会において、「しきなみ賞」は、「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(12名)、「しきなみ新人賞」は「最優秀賞」(1名)、「優秀賞」(2名)、「佳作」(12名)の入賞作品が決定いたしました。また30回の節目を記念し、「特別参考作品」から3名の作品が選ばれました。
「しきなみ賞・しきなみ新人賞」とは・・・
しきなみ短歌会員を対象とした賞。 作歌により心境の錬磨・研鑽に努力している個々の会員のさらなる作歌力の向上に資するとともに、若い才能の発掘・育成を目的としています。
しきなみ賞
◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆
「父の想い出」
若林京子(栃木県・那須野ヶ原法人・真砂集)
じゃり道を自転車の荷台立ち乗りて広き父の背にしがみつきたり
船乗りで赤銅色の父「ポパイ」我をぶら下げ揺らし遊ばす
父とふたり雪道歩き映画館最初で最後の『ゴッドファーザー』
もう一度父に会えたら差し向かい鰯のぬたで一杯やりたい
ちちのみの父の好物日本酒をきりっと冷やし遺影に献杯
◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆
「弟子入りの頃」
浅野勝広(宮城県・仙台・飛雲集)
弟子入りし毎日糊付けやらされて親方の想いあの頃知らぬ
また今日もボロボロ襖の下張りかもううんざりだ卒業したいと
「お前にはいくら言っても解かるまい」また始まった親方の小言
親方にようやく合格の判もらい外へ出られることのうれしさ
親方に弟子入りしてから四十年今日は命日線香手向ける
「吾子の入院」
安田さち子(神奈川県・登戸・真砂集)
たんたんと医師の告げしは紫斑病じっと見つめる吾子まだ六歳
「おかあさんぼくじんぞうもわるくなった」覚えたばかりのたどたどしい字で
病室の窓から見える玩具店「元気になったらプラモ買ってね」
五分前面会終了迫るなかわが手をぎゅっと握りしめる吾子
二十歳まで毎月検査を条件に待ちどおしいね退院できる日
◆◆◆ 佳作 12名 ◆◆◆
・「最近は何でもすぐに忘れるの」そう言いながら照れ笑う母
/米岡次夫(栃木県・那須野ヶ原法人・真砂集)
・背を向けて夫の逝きし日に「がんばれ」と一言だけを言いて去る父
/田口敏子(茨城県・飯島・群蛍集)
・枯れ草のあいだによもぎ萌える頃幼き弟この世を去りぬ
/佐藤五百子(埼玉県・鳩ヶ谷南・飛雲集)
・休みなく砂粒咥へて運び出し巣穴繕ふ蟻族の春
/石渡貫一郎(千葉県・郡本・群蛍集)
・よそごとに非ずや我が家も水害にまさかを味わう恐怖の豪雨
/岩田和子(東京都・大岡山・白光集)
・朝市の二百五十軒店ありき跡形もなく草生いしげる
/岸野守雄(石川県・金沢・飛雲集)
・認知症患う妻が興味持ち夫婦で習う絵画教室
/藤弘充敏(広島県・国泰寺・飛雲集)
・大好きな鯛飯ほおばり笑み浮かべ少食の父おかわりをする
/門脇綾(愛媛県・松山・真砂集)
・「皆起きてババさんのもう逝きなはる」母に抱かれて祖母はあの世へ
/石橋正子(熊本県・水前寺・飛雲集)
・幼日に遊びし宮の境内に父の短歌の石碑苔むす
/橋本多實子(熊本県・水前寺・白光集)
・今もなお防空壕のカビ臭さ記憶の隅にはびこっており
/井上泰秋(熊本県・平井・群蛍集)
・亡き孫よ貴方に似ている弟は背すじも凛ともう大人だよ
/仲本愛子(沖縄県・城東・飛雲集)
しきなみ新人賞
◆◆◆ 最優秀賞 1名 ◆◆◆
「アワビの口開け」
酒井修子(宮城県・石巻・青泉集)
高齢の夫はアワビの口開けに腕衰えぬと気合が入る
充電機スラスターなど積み込んで夫は意気込むアワビの口開け
冬の海へ船出し挑むアワビ採り夫の無事を祈りつつ待つ
豊漁のアワビを買い手に渡す夫得意と満足疲れは見せず
さっぱ船を操るアワビの漁終えた夫は今日も海に生かさる
◆◆◆ 優秀賞 2名 ◆◆◆
「古都」
荒浪正子(神奈川県・栄区・青泉集)
円覚寺秋の夕日に照らされて石仏凛と佇みおわす
走水神社の森の木漏れ日はミステリアスな水玉模様
猛暑去り我が世とばかり蜩の鳴く声聞こゆ古都の夕暮れ
松原の影に憩いし亡き母の夏の思い出波音を聞く
古の面影偲ぶ建長寺桜の咲きて春は巡り来
「社会人としての日々」
北野佑汰(大阪府・松原・青泉集)
誰一人味方のいないオフィスでもブルーハーツは叫ぶ「ガンバレ」
キラキラと水面に映る太陽が車内で俯く僕を励ます
東京に埋もれる僕は六等星光放てど見向きもされぬ
僕がこの仕事を終わらせなくとも今日も変わらず地球は廻る
湯に浸かり壁のタイルを数えつつ明日生き延びること考える
◆◆◆ 佳作 12名 ◆◆◆
・絶対に買おうと決めたお揃いの三十年振りの結婚指輪
/宮井由規(千葉県・君津市法人・青泉集)
・祖母いつも外出る前に香水をひと吹きまとい背筋を伸ばす
/尾下里佳(東京都・湯島法人・青泉集)
・亡き夫は柔一筋五十年厳しき中に礼節をとく
/須藤好江(茨城県・土浦中央・青泉集)
・我が夫は義父が身罷り託されし二反の田畑継ぐと転身
/染谷悦子(茨城県・取手・青泉集)
・房州の見覚え有りし居酒屋で二級酒呑んで亡き妻しのぶ
/和田智治(茨城県・取手・青泉集)
・空見上げ在りし日想い手を合わす旅立つ恩師のみ教え胸に
/田中久雄(静岡県・富士宮・青泉集)
・一瞬の間の静寂に床を踏み留拍子で終演知らす
/小島礼子(兵庫県・播磨土山・青泉集)
・継職の本番さながらリハーサル着慣れぬ裃それもまた良し
/若本泰弘(福岡県・合河・青泉集)
・雨風に百年耐えし老木の温州みかん甘さが詰まる
/藺牟田真奈美(熊本県・帯山・青泉集)
・餅いくつ尋ねし母の若き声聞こえた気がして目覚めし元旦
/佐藤貴子(大分県・大分中央・青泉集)
・戦後の世を強く生ききし我が母は白寿の坂を杖とのぼりぬ
/玉元庄弘(沖縄県・具志川・青泉集)
・寝ていても吾の気配へ手を伸ばす小さな温もりぎゅっと抱きしめ
/片山春香(沖縄県・城東・青泉集)
◆◆◆ 特別参考作品 ◆◆◆
「歌会」
ホン史子(米国・南カリフォルニア・みすまる集)
心身を朗らに整え出かけ行く月に一度の歌会なれば
それぞれの個性輝く詠草に作者は誰と心遊ばす
朗詠に昭和の歌を練習すしみじみ思わる子供の頃を
調べよく胸にしみ入る詠草の古語に千年の思いを馳せる
アメリカで続けて三百八十回和む歌会心のふるさと
「日常」
神谷優子(沖縄県・石嶺・みすまる集)
「反抗期だから挨拶しないんだ」小五の児童はきっぱりと言う
「上履きは嫌いなんだ」と靴下のかかとに穴あく小二の男児
雨降りに傘を持たずに登校の児童は「家はすぐそこだから」
「朝ごはん食べてこない」という児童「給食時間が待ち遠しい」と
頑なにあいさつ拒む小五の子半年経てば「おはよう」と言う
「父を想う」
執行喜代子(福岡県・櫛原・うずたま集)
終戦後八十年に父想う戦友の死を一度ぽつりと
銃に死する友の胸元まさぐりて父は遺品を家族の元へ
青春を支那に戦う数年をお国の為と父は語らず
軍歌に酔い踊りし父の面ざしに笑顔の溢れ安堵せし夜
令和なら心晴らしの出来たかも父は戦を秘めて逝きたり
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一般社団法人 倫理研究所 文化部
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